相続の備えというと、まず「遺言書」を思い浮かべる方が多いでしょう。たしかに遺言書は、自分の亡き後に財産を誰に引き継ぐかを明確にできる有効な手段ですが、一方で、遺言書では「一代限り」の承継しか指定できず、次の世代以降の流れまではコントロールできません。
そこで注目されているのが、家族信託のなかでも「受益者連続型信託(跡継ぎ遺贈型受益者連続型信託)」を活用した財産承継です。
こちらでは、相続対策としての家族信託について確認していきましょう。
受益者連続型信託とは
家族信託の基本は、「財産を信頼できる家族(受託者)に託し、その管理や運用をルールに従って行ってもらう」というものです。そのなかでも受益者連続型信託は、「最初の受益者が亡くなった後に、次の受益者が権利を引き継ぐ」という仕組みをもった信託です。
たとえば、以下のようなケースが代表的です。
- 委託者(父)が信託を設定し、最初の受益者を配偶者(母)に指定する
- 母の死後は、子どもたちが次の受益者となるよう契約で定めておく
こうすることで、遺言書のように一代限りではなく、「財産の流れ」を複数世代にわたって設計できるのが最大の特徴です。
相続対策における遺言書との違い
遺言書では、例えば「自分 → 子ども」のように一代先までの承継しか指定できません。子どもが亡くなった後、その財産を誰に渡すかは、子ども自身が新たに遺言書を作成しなければ指定できません。
一方で、受益者連続型信託では、契約時に“次の次”の承継先まで定めておくことが可能です。たとえば、一定の制限はあるものの「自分 → 妻 → 長男 → 長男の子(孫)」というように、あらかじめ承継のルールを契約で確定させておくことができます。
また、信託契約に基づいて、受託者(家族)が継続的に財産を管理・運用していく点も特徴です。この仕組みにより、ご自身が亡くなった後も家庭内で財産の管理を引き継ぎながら、円滑に承継を進めることができます。
相続トラブルの予防にも有効
受益者連続型信託のもう一つの強みは、財産の流れを明確にすることで、将来の相続トラブルを防げる点です。
たとえば、
- 二次相続(配偶者の死後)の財産配分をめぐって、兄弟姉妹で揉めてしまう
- 再婚などで家族構成が変わり、前妻の子どもと後妻の間で争いが起きる
といったケースでも、信託契約であらかじめ「どの段階で、誰が受益権を得るか」を定めておけば、後の世代に不公平感を残さず、争いの火種を最小限にできます。
相続対策としての信託設計の注意点
受益者連続型信託は、自由度が高い分、設計には注意が必要です。
- 期間の上限:民法上、同一の信託契約に基づく信託は、「信託がされたときから30年経過後に受益権を取得した受益者が死亡したとき」までの上限がある。
- 課税関係:受益権が次の受益者へ移るタイミングで贈与税や相続税が発生する場合があります。
- 遺留分への配慮:他の相続人の遺留分を侵害しないよう、設計時に専門家の確認が必要です。
こうした要素を整理しながら、税務・法律の両面から最適な形で設計することが大切です。
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