高齢化が進むなか、「もし認知症になったら、自分の財産はどうなるのだろう」と不安に感じる方も年々増加しています。
認知症を発症すると、預貯金の引き出しや不動産の売却などの法律行為を単独で行うことができません。家族に代わりに動いてもらいたくても、銀行や不動産会社などでは「ご本人の意思確認ができないため手続きできません」と断られてしまうケースも多く見られます。
こうした「判断能力低下後の資産凍結リスク」を防ぐために、家族信託が活用されています。
家族信託は「お元気なうちからの認知症対策」
家族信託は、元気なうちに信頼できる家族(受託者)へ財産の管理・運用を任せる契約です。本人(委託者)が判断できるうちに契約を結ぶことで、将来、認知症を発症して判断力が低下した後でも、家族が契約に基づいて財産を管理・活用することができます。
たとえば次のようなケースで家族信託が活用されます。
- 施設入居に合わせて自宅を売却し、入居費用に充てれるようにしておきたい
- 預貯金を家族が生活費や医療費に使えるようにしておきたい
- 不動産の修繕や賃貸管理をスムーズに続けたい
これらの希望は、判断能力を失ってからでは実現が難しいものです。家族信託を活用することで、あらかじめ「誰が」「どの財産を」「どのように管理・処分するか」を契約で定めておけるため、認知症発症後も滞りなく財産を活かすことができます。
認知症対策とその具体例
家族信託を利用した場合の認知症対策としては、具体的にどのような対策を講じることができるのか、4つほど具体例をあげてご紹介していきます。
【例①】家族信託によってご自宅を売却する
例えば親がご高齢のため施設に入居、そのために今まで済んでいた親名義のご自宅に誰も住んでおらず空き家になったとします。この時にまだ親がしっかりと判断能力がある状態であれば、親自身でご自宅の売却を行う事ができます。
しかしながら、認知症により判断能力が欠けている状態になってからでは売買契約といった法律行為を行う事は認められておりません。そして、たとえ子であっても、親の名義である不動産の売却は認められていません。そして、成年後見制度を利用して不動産売却を行うためには家庭裁判所の許可が必要なため、許可がおりなければ売却する事ができず、もしも施設入居の費用をご自宅売却で賄おうと考えていた場合には、計画通りに運ばない可能性もあります。
親子で結ぶ家族信託の契約は、親の判断能力に関わらず親名義のご自宅を売却できるように設定する事が可能となるのです。
【例②】金融機関の口座凍結を防ぐ
例えば、認知症である親の医療費支払いのために、親名義の金融機関口座からお金を引き出そうと思っている子どもがいます。しかし、認知症で判断能力が低下していると見なされた親の名義口座は凍結されてしまい、家族と言えども出金を行う事はできません。それだけでなく、口座振替や解約といった事すら出来なくなります。このような事態を回避するためにも家族信託が非常に有効です。親がまだお元気でしっかりとした判断能力があるうちから家族信託を利用して、いざという時に金融機関の口座が凍結される事なく、受託者となるご家族の管理下において預金口座を扱う事ができるように準備しましょう。
【例③】賃貸不動産の管理を家族信託で行う
不動産投資で賃貸マンションの管理を行っていて、例えば築年数が経過したマンションの入居率を上げるためにリノベーションをしたいと考えているとします。その所有者である親が認知症を発症してしまった場合、前述でも説明した通り契約にあたる行為を行えないため、工事を業者に依頼する事は出来ません。
もしも、その認知症の親に成年後見人を立てていた場合はどうでしょうか。そもそも財産を維持する事が成年後見人の目的であり役割です。不動産投資を目的とするリノベーションに関する工事の契約を代行する事は、成年後見人の役割と見なされず、代行は難しいでしょう。
今回のケースで家族信託を利用していた場合はどうでしょうか?親を「委託者」、財産を託される子どもを「受託者」に指定して家族信託の利用していた場合、その後に親が認知症を発症したとしても、受託者である子供が投資目的のリノベーションに関する契約、および管理・運用・処分等など全般を行う事ができます。
しかし、こういったケースで注目いただきたいのが委託者の財産から生じた利益を得る「受益者」についてです。マンションの入居者が支払う家賃は収益であり、これは受益者が受け取りを行います。委託者である親を受益者に指定した家族信託契約であれば、家賃収入は親の財産となります。そうする事で、親は今まで通り家賃収入を得ることが出来ますし、マンションの管理・運用については子が行う事が可能です。この利便性の高さが家族信託利用をお勧めするポイントになってきます。
【例④】事業承継の対策として家族信託を利用する
中身を柔軟に決める事が可能という特徴を生かし、事業承継対策に家族信託を利用することもできます。例えば、会社経営者が相続対策として財産の贈与を考えているとします。高額な相続税がかかってきたり、子に事業用資産や自社株を分散させたくない、という懸念事項が上がる事もあるでしょう。
親から子への事業承継を考えた場合でも、家族信託を利用することにより贈与税の負担を回避する事ができます。そして、特定の方に自社株や事業用資産が集約するように、遺産分割方法を指定する事もできます。
事業主である親が生きていらっしゃる間は指図権を付与する内容を契約書に盛り込んでおけば、たとえ家族信託を利用して子に資産名義が変わったとしても、株主の議決権を保持しておくことも出来ます。
そして前述でもご説明した通り、家族信託は次世代の相続まで指定する事が可能ですから、二世代に渡る事業継承も可能になりまます。例えば、事業主である夫が亡くなった場合にはまず妻が、そして、妻がや亡くなった際には子が継承するという信託契約によって、妻が認知症を発症した場合にも子に会社を任せる事が可能になります。
家族信託の注意したいポイント
家族信託は認知症対策としてとても有効な手段になります。しかし、家族信託というのは出来てから比較的新しい信託方法のため、経験豊富な専門家の数が限られるというのが現状です。
そして、受託者にはご自身の大切な財産を託すことになるのですから、司法書士や弁護士等の専門家といった、法律における士業のプロに受託者をお願いしたいと考える方もいると思いますが、家族信託においてそれは認められておりません。
家族信託というのは、ご自分の財産を信頼できるご家族等に託すための比較的新しい仕組みです。ご家族全員が納得できる内容の家族信託にするために、そして、後々生じるかもしれない思いがけないトラブルを防ぐためにも、家族信託の利用にあたってはきちんとご家族同士で話し合いの場を持つことが大切です。そして、認知症対策として家族信託を利用する事ができる契約ですので、そのためにもしっかりとした判断能力がご自身やご家族のある間に、取り掛かる事が大切です。
古河生前対策相談プラザでは、これまでに多くの家族信託をお手伝いをしております。認知症を発症した際の財産管理や事業承継に不安のある方は、ぜひ古河生前対策相談プラザまでご相談下さい。茨城・古河のお客様のお悩みやお困り事をお伺いしたうえで、最善となる家族信託の活用方法をご提案いたします。初回相談は完全無料ですので、古河生前対策相談プラザまでお気軽にお問い合わせください。茨城・古河の皆様のお問い合わせを心よりお待ちしております。